Feb 07, 2021
Standing Under Bright Lights
“Standing Under Bright Lights”は、世界各地で評価を得たAlex Henry Fosterの1stソロアルバム『Windows in the Sky』のリリースから半年後に開催したライブコンサートです。『Windows in the Sky』はリリース日、カナディアンチャートTop200の中でImagine Dragons、Museに続き第3位を記録し、その後1年ほどTop40に残り続け、海外でも高評価を得る中、カナダのベストアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされました。
『Windows in the Sky』の大きな成功はフォスターを、かつてオルタナティブ・ロックバンドYour Favorite Enemiesのシンガーとして10年ほど活動してきたカナダの音楽シーンの前線へと再び導きました。(バンドはフォスターが亡き父親を悼む時間を取るためにタンジェに向かったときから休止状態)2年ほど続いた追悼の時期は、旅路となって、フォスターの悲しみに満ちた絶望に終わりをもたらし、のちに彼の1stソロアルバムを誕生させるインスピレーションとなりました。サウンドは、Nick Cave、Sonic Youth、MogwaiやGodspeed You! Black Emperorなどの影響が感じられます。
最も純粋なかたちで楽曲の親密さを保ちたかったフォスターは、ツアーや公共のイベント等を全て断りました。それでもなお、モントリオール国際ジャズフェスティバルの副代表であるLaurent Saulnierは、40周年記念を迎えるフェスティバルの屋内メイン・イベントの一つとして出演するよう根気強く説得しました。フォスターは遂に、その招待を受け入れ、プロダクションやプロモーションにおいても自由にして良い、との条件付きで出演が決定しました。
このコンサートは、開催日とほぼ同じ日に5周忌を迎えるフォスターの父親へのオマージュとして、一夜限りのコンサートとなる予定でした。この機会にアルバム『Windows in the Sky』を再解釈し、11人のバンド編成として演奏しました。そしてステージ背景にはフォスターがプロデュースした映像をプロジェクターで投影し、更にアワード受賞経験のある照明エンジニアPascal Boilyが制作したユニークなステージセッティングによって、音楽、映像と照明が共存した没入的な世界観を創り出しました。それは、会場に足を運ぶ人たちに、コンサートを観に来たという感覚よりも、その瞬間に浸れるような体験を提供したいというフォスターの思いが形となったものでした。
このコンサートが一夜限りであることが公に発表され、またそのユニークなステージ・プロダクションに関する噂もあり、海外メディアからも注目を集め、日本、ドイツ、イギリス、フランスやアメリカから、ファンがモントリオールに集まり、この夏の時期にチケットを取るのが最も難しいイベントの一つとなった結果、ここ数年でフェスティバルが開催してきた中でも、数少ないソールドアウト・コンサートとなりました。
このような注目に伴う多大なプレッシャーや期待を意図的に無視したフォスターと10人のミュージシャンたちは、多くの人からの高い期待をも完全に凌ぐ素晴らしい演奏をしました。およそ2時間30分に及んだセットは、今やモントリオール国際ジャズフェスティバルの40年間の歴史においても最高のコンサートであり、その年の最も素晴らしいプレゼンテーションの一つとして取り上げられました。しかし、フォスターにとってより重要だったのは、観客を招待した没入型の体験が大きな成功を収め、それによって、ファン体験に新たなスタンダードが出来上がったことでした。
実際、コンサートは驚くほどエモーショナルなもので、それはこれまで体験したことのないような心の高揚を生み、何度も演奏することによって、楽曲にある親密さや本当の魂が失われてしまうかもしれないというフォスターの不安に新たな視点を与えました:
“曲を何度も演奏せずに、それを純粋なまま保っておきたいっていうのは、父親の一部を生かしたままにしておきたいっていう息子としての究極の試みだったんだ。でもあの夜、曲の言葉や音色を人と分かち合うことによって、それが生まれた時の感情を超えて、より大きく広がり、そして永遠になるんだと気がついた…父のようにね。だから、今も残っている唯一の心配事は、毎晩、父を手放すときに独り取り残される恐怖と、どれだけしっかりと向き合えるかということ。ありのままの自分を受け入れない理由が、もはやなくなったとき、光の下に立つ勇気があるかどうか。そこで自分や周りの人に明らかになるものが何であっても…”。
元々はフォスターの父親の誕生日でもあった2020年10月8日にリリース予定だったこのプロジェクトですが、世界的なパンデミックによって生じた時間を使って、『Windows in the Sky』の共同プロデューサーであり、長年の創作パートナーでもあるBen Lemelinと一緒に未発表曲「The Son of Hannah」をフィーチャーしたアルバム『Standing Under Bright Lights』を制作しました。また、フォスターはコンサートフィルムにも取り組んでおり、更に2021年の春にリリースを予定している“If Only the Voices In My Head Couldn’t Lie”とタイトルづけられた著書にも取り組んでいます。